分解性(安定性)の試験

熱分解性、あるいは熱安定性の評価は、試料を加熱したり貯蔵・運搬の際の温度管理を行う上で非常に重要な項目です。熱安定性や分解時の激しさはスクリーニング試験である熱分析試験から推定することができますが、熱分析試験で扱う試料量はわずか数mgであり実際的ではありません。一般に、取り扱う試料の量が多くなるに従って内部は断熱状態となるため、分解開始温度は熱分析試験で得られた結果よりも低下する傾向があります。(熱安定性の評価がまだ十分になされていない時に試料を取り扱う場合は、熱分析試験による分解開始温度よりかなり低い温度で取扱い・貯蔵をする必要があります。)

圧力容器試験

有機過酸化物の分解の激しさを評価する試験法として、古くから用いられてきた試験です。試料を圧力容器と呼ばれる容器に入れ、オリフィス板を取り付けて加熱します。分解して発生したガスはオリフィス孔から放出されますが、オリフィス径が小さいとガスの発生速度が放出速度を上回り、容器内の圧力が高くなり破裂板を破裂させます。この破裂板を破裂させる最小のオリフィス径で危険性を評価します。消防法では1mmと9mmが判定ラインですが、国連法では、1、3、5及び9mmで評価します。

自然発火性試験(SIT試験)

自然発火とは、「物質が空気中で発火温度よりはるかに低い温度で自然に発火し、その熱が長時間蓄熱されて発火点に達し、遂に燃焼に至る現象」と定められており、SIT(Spontaneous Ignition Tester:自然発火装置)は数gの試料を断熱状態に置き、燃焼にいたるまでの時間を測定する装置です。

自己発熱性試験(WB)

物質を金網に入れて一定温度に保ち、発熱の有無を評価します。

蓄熱貯蔵試験

自己反応性のある物質の貯蔵時の安定性を評価する試験で、400mlの試料を500mlのデュワー瓶に入れ、これを一定温度に保った恒温槽内に設置して内部の温度変化を観察します。反応が起きれば温度変化が観察記録され、試料がデュワー瓶から吹き出していたり恒温槽内部に残渣が付着していたりします。1週間以上放置しても分解を起こす最低の温度をSADT(Self-Acceleration Decomposition Temperature)と呼び、国連勧告ではこの温度より更に低い温度を管理温度にする必要があるとしています。400mlという大量の試料を用いるので、実際に試験を行う前に爆発性の試験や圧力容器試験などの標準試験を十分に行い、激しい分解が予想される場合は、爆発しても危害を及ぼさない場所、またはその対策を施した場所に恒温槽を設置して試験を行わなければなりません。

各試験の必要試料量はこちらをご確認ください。

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